コロナ禍の中で

 コロナ禍で多くの人が苦しんでいます。リモートワークできる仕組みも感染防止策もないまま属する組織の建前の下に最前線で働かねばならない恐怖。無理な休業や失業で生活の糧を失いかねない恐怖。万一罹患し症状が急速に悪化して何の夢も叶えられず中途半端な人生を突然に終わらされることになったらという恐怖。良くも悪くも急激な変化を強いられ、貧すれば鈍する人心は大きく傷ついていくなかで、社会はもはや「コロナ前」には戻らないかもしれないです。

 今年度の司法書士試験については受験申請を当面控えるようにとの発表がありました。試験が延期になるともならないとも、もし願書を出したら暫時受理されるのか無効となるのかも、何ら明記されていない「お願い」であります。各受験指導校は勉強を継続せよと受験生を励ましていますが、もし自分が受験生の立場なら正直耐えられないと思います。「あの」苦しい苦しいフルマラソンを走ってきて40km付近まで来たところで「ゴールが10km伸びるかもよ?」と言われるようなものです。あと2kmちょっとだ!と思うからこの苦行に耐えられるのに…。
 そんな各受験指導校の励ましの中で伊藤塾さんの励まし動画には実は心打たれました。僕は受験生時代、LECと早稲田セミナー(現TAC)を利用していたので伊藤塾とは縁が無かったのですが本動画の伊藤塾長の話は良いお話でした。”市民に身近な法律家としての司法書士の使命”という矜持だけが崩れそうなメンタルを支えてくれるかもしれません。

 僕は現在、10月の土地家屋調査士試験対策をしています。ところがコロナ禍で本業が繁忙を極め、勉強どころでなくなっています。なのでこのゴールデンウィークは遅れを取り戻すチャンス・・・の筈ですが、蓄積した心身の疲労が出てなかなかうまくいきません。思えば一昨年のこの時期は司法書士本試験直前の追い込み、昨年の歴史的な10連休は認定考査と測量士補試験の追い込み、そして今年はコロナ禍の中での調査士試験対策。。。早く試験モノをやっつけ、運良くコロナ禍を通り抜けたら、次の連休こそは旅行にでも行きたいですね。

預金口座への差押における悩み②

 給与債権を差し押さえようとした場合、給与所得者の生活を保護するため給与の「全額」を差し押さえることは出来ません。差し押さえることができるのは原則として「給与の1/4まで(養育費等の為の差押の場合1/4→1/2に拡大)」です。そして差押債権者が取立を完了するまでの間、差し押さえられた債務者は裁判所に申し立てることによってこの差押される給与債権の範囲を更に縮減することが出来ます。

 ところが差押債権者が取立可能となるのは債務者への差押命令送達後1週間で、その間に債務者が差押範囲縮減の申立をすることは事実上困難でした。

 そこで改正民事執行法では給与等の債権差押について取立権の発生時期を遅らせ、原則債務者への送達後4週間後とされました。第三債務者としては「いつ支払って良いのか」よく確認しなければなりません。

■債務者への差押命令送達後いつから差押債権者の取立権が発生するか

一般債権

給与債権

養育費等のための差押

その他

1週間

4週間

 

 問題は「給料が振り込まれた預金口座」は給与債権なのか普通の預金(一般)債権なのかということです。もし給与債権と解されるならば、債務者への送達から原則として4週間経たねば差押債権者に支払えません。(養育費等のための差押の場合は従来どおり1週間で支払える。)

 一般的には預金口座に給料が振り込まれたら、それはもはや給与債権ではなく預金債権となります。預金口座には流動的に入出金があり特定の原資のみを観念し得ないからです。
 しかし例えば給料支給日の朝にその預金口座が差し押さえられてもそれで良いのでしょうか。滞納処分の例ですが佐伯市H29.10.13裁決では「預金債権の差押が給与振込直後であったため、実質的に給与債権の差押にあたる」として滞納処分の一部が取り消されています。

 そうすると金融機関としては差押の取立支払事務を機械的に処理してはいけないということになります。取立権を行使してきた差押債権者の本人確認等を別として、確認するべきことは下記3点。

  1. 債務者への送達日はいつか。
  2. 差押送達時直前の入出金状況から見てそれが給与債権の差押と同視しうるのか。
  3. 請求債権に「扶養債権等の債権」が含まれているのか。

 従来は上記1だけを確認すればよかったところ、今後は2,3も点検しなければ、取立権を行使してきた差押債権者に対する支払可能時期が到来しているのか否か正しく判別できません。金融実務上、上記3はともかく、2は判断する余裕はないと思われます。

 

 給与振込の場合は「振込」「振替」でなく「給与」「賞与」と通帳印字される業界慣行が確立されるか、或いは差押債務者への送達時より1~4週間の間の取立については機械的に弁済供託することで取立訴訟を回避する(供託原因は債権者不確知?)、そんなことが可能でしょうか。

預金口座への差押における悩み①

 近年感じていたことですが、官公署による租税公課の徴収姿勢がかなり厳しくなっていると思います。それは金融機関への預金口座差押及び税務調査等の急増に現れています。

 預金口座への差押はある日突然やってきます。しかも国税徴収のためだけではありません。地方税社会保険料の徴収を目的とした差押も多いです。

 

強制執行

(民事執行法)

滞納処分

(国税徴収法)

債務名義(≒裁判)

不要

取立権発生時

債務者への送達から1週間後

即時

 国税徴収のための差押・取立を一般に滞納処分と呼びますが、一般の債権に基づく強制執行と異なり上記のように強力な執行力を持っています。地方税社会保険料の徴収も「国税徴収法に規定する滞納処分の例」「国税徴収の例」により国税徴収と同様の執行力があります。

 もし差押を受けた預金者が金融機関から融資を受けていれば、取引約定書の「期限の利益喪失条項」によって融資金の期限の利益を失い、事実上倒産に追い込まれかねない恐ろしい事態です。したがって滞納処分は「官公署としてあらゆる回収手段が尽きた先の万止むを得ない措置」として欲しいところです。

 ところが実際は差押に驚いた預金者が慌ててお金を納めたら差押を引っ込める、いわば「脅しとしての差押」が少なくない。徴収担当者に話を聞くと「督促状を送ったのに音沙汰がない」と言うものの、こちらから電話すると普通に通じて「寝耳に水」ということもあります。そんな時は尚更、期限の利益喪失を招きかねない(社会的)影響の大きな預金差押なのだからせめて1本電話すれば良いのに…と思います。

 

 この差押の前段階にあるのが官公署から預金の有無を照会してくる税務調査等です。調査依頼書は今や毎日のように金融機関に届いており、通常業務の大きな支障となっています。なにしろ問答無用で期限を切られて回答を求められるのですから。「費用は負担します」と言ってくる例もありますが、お金の問題でなく調査・回答を処理する人員がいないのです。(余談ながら改正民事執行法で定められた「第三者への情報取得手続」が始まったら、更に膨大な量の調査依頼が届くのだろうかと思うと暗雲たる思いです。)

 

 ところで、地方税社会保険料の徴収における差押通知書や調査依頼書にはよく先述のように「国税徴収法に規定する滞納処分の例」「国税徴収の例」による、という用語が使われています。この「例による」というのは「地方税社会保険料の徴収についても国税の徴収に準じるよ」という意味です。
 しかし法文の準用は通常「第○条を準用する」「第○条第○項本文を準用する」「第○条第○項の「○○」とあるのは「××」とする」「第○章第○節第○款(第○条第○項、第○条第○項を除く。)及び第○款並びに第○節から第○節までは適用しない」等のように厳格に規定するものです。それが「例による」というだけで国税徴収と同等の強力な執行力が得られるというアバウトな規定ぶりには強い違和感を感じますね。

近況報告2020春

 年始から公私とも多忙な日々を送っていますが気づけば3月。直近だけコロナウィルスの影響でやや繁忙感が減少しているものの、年度末の怒涛に片足突っ込んだ状況です。年始に掲げた勉強目標は大きく未達になっているので軌道修正が必要ですね。

  • 調査士試験対策

 去年の9月から始めたLECのインプット講義がもうすぐ終了します。択一過去問は漸く一周し、二周目に入ったところです。ですが出来が非常に悪く平均正解12~13問/20問…。記述はまだ過去問に手をつけてすらいません。
 思えば司法書士試験だって15年以上の歳月を費やした出来の悪い僕が、そうそう上手く行くはずないかと目が覚めた思いです。8%の壁は甘くない。でも頑張って何とか一発合格したいです。公私の事情で、勉強できる今の環境はそう長く続きそうにないのです。
 10月の本試験まで過去問を回して択一知識の精度を高めつつ、書式演習をどれだけ積み上げられるかにかかっています。書式の過去問は自力で解けそうにないのと複素数計算での解答例が欲しいので、悩んだ末、アガルートの講座を単発で受講することにしました。
 表示に関する登記と権利に関する登記はいずれも不動産登記法という一つの法律で規定されてはいますが、似て非なる部分や考え方が異なる部分が少なくないことが分かりました。自分の専門である権利の登記の前工程を知ることで不動産登記の全体像が掴めたので勉強してよかったと思います。後は「結果」だけです。

 去年の10月から半年で一周という計画でコツコツ回していた「ケータイ司法書士」、予定通り今月中に全6冊を一周できそうです。合格から登録までの間、どんどん力が落ちていくのをなんとか最小限にしたいという思いで始めました。本書の水準は「問われたら即答しなければならない最低限の知識」と言えます。でもいざ回してみるともうボロボロで、やはり自分はまぐれ合格だったと自信を失わせるに十分な有様です。
 だからこそやる意義があります。将来司法書士業界に入ったとき、許されるのなら何処かの事務所に入って修行したいと思いますが、「お前本当に合格者?」とお世話になる方々を失望させるようなことが決してないよう勉強を続けます。まずは民法改正、民事執行法改正、そして来る会社法改正にキャッチアップしてゆきたいです。
 年始に読もうと買った破産法のテキストはまだ開かれることなくずっと机の片隅にあります。今回の民法改正で条文が増えて難しく感じる詐害行為取消権ですが、破産法と平仄を合わせた部分が多く、破産法を学んでいたらなお理解が進んだだろうなぁと思います。
 そういえばそろそろ「登記情報」の購読期限が到来します。次には難解と敬遠していた「登記研究」をいよいよ購読してみよう。
 ケータイ司法書士、次の半年で二周目と行きたいところですが調査士試験対策の比重を高めたいので調査士試験が終わるまでペースを落としていきます。
 

  • いつ登録するのか

 増税と減給で生活が苦しい中、実家の手入れや親の介護等でお金が掛かり、安定した月給の魅力が非常に大きくなっているのは正直あります。当初オリンピック後と目されていた大不況はもう目前かもしれないと思うと、ここで安定した職を一旦失い全く畑違いの分野に身を投じるのは怖いです。
 でも司法書士試験を目指したときのこと、それから長い長い時を経て合格したときのことに思いを馳せると、早くこの道でやっていきたいという気持ちも日に日に高まっています。当面は二足(三足?)の草鞋で頑張りますが、時間は有限だし悩ましいところです。合格した後になって自分の「本気度」が試されています。

 

 近況はこんな感じです。やりたいことが多すぎて時間が足りないですね。ただアラフィフで身体のあちこちにガタが来ているので、健康にも気をつけないとです。上記は健康あっての計画ですからね。
 実は昨日、司法書士業務にとって重要な判決が出ました。じっくり読んでみたいと思います。

謹賀新年2020

 明けましておめでとうございます。

 年末年始、周囲で(僕を含め)体調を崩す人が多かったけれど、なんとか倒れずに仕事始めを迎えられそうです。身体は弱い方ながら、一病息災という感じで仕事に穴を空けることが案外ないのが有り難いです。
 今年はオリンピック前後からの大不況到来が予測されるは、会社のリストラは加速するは、実家における老親の介護問題が深刻化するは、厳しい一年になると思います。なので与えられた場で自分なりにベストを尽くすしかない。数年後に遅咲きの司法書士として登録し後半人生をどう組み立ててゆくのか、しっかり考え準備したいと思います。

 今年の目標。

 まずは今年の調査士試験です。

 正月休みの間に頑張って民法以外の択一講義をなんとか聞き終えたので、今月から過去問演習に入ります。書式講義の消化もペースを更に上げてゆきます。今のところ手応えは全くないけれど、勉強を続けるうちに視界が晴れる瞬間があるはずですから、それまでコツコツ頑張ります。
 調査士の不登法学習は司法書士のそれとかなりリンクしていて、相互に勉強になります。一般的に「登記相談」と言えば表題部も権利部も区別なく持ち込まれると思うし、将来、司法書士として仕事をするに当たり「前工程」を知っていることはお客様への説明に自信が持てると思います。調査士の勉強を通じて表題部の知識もしっかり押さえておきたいです。

 併行して「ケータイ司法書士」を使って進めている司法書士11科目の総復習も続いています。こちらも正月に遅れを取り戻して憲・民・刑・民訴系・商業記述まで終わりました。今月から不登法(記述・択一)、会社法、商登法、供託・書士法と続いていきます。予想通りびっくりするほど忘れているため、この総復習は司法書士として登録するまで不可欠のルーティーンになります。今年中にもう1~2回転します。民法民事執行法司法書士法の改正対応も織り込んでいきたいです。 

 未登録でも参加できる青年司法書士会での活動も続けてゆきます。
 司法書士業界の末席で業界知識の研鑽、隣接士業との交流をさせていただくつもりです。僕はこの二十数年間、会社から毎月給料を貰える生活を続けてきた甘ちゃんです。厳しい自由業としての知識と経験を諸先輩方から盗んでいきたいですね。

 そして最後に健康維持。
 この年齢なら一丁目一番地の課題ですが、僕が最も苦手とする分野です。実はツイッターで見た情報に刺激されて正月からフロントブリッジを始めました。恥ずかしながら10秒も出来ません。これも毎日コツコツ続けて行きます。1年後はどうなっているか楽しみです。(【追記】これ1カ月で挫折してしまいました汗。)

 

 こんな感じで、明日からの仕事も頑張ります。

 今年もどうぞ宜しくお願い致します。

体調が悪いです

 最近体調が悪くて勉強も開業準備も停滞しています。

 人生を賭けた司法書士本試験とそれに続く認定考査を突破して疲れが出たのかもしれません。そういえば遥かな昔、大学受験を突破した後も4月初まで寝込んでいました。調査士試験対策を始めやりたいことはいっぱいあるのですが、今は会社に行くだけで精一杯。復調を優先して勉強は休みます。
 会社員には有給休暇があり、代わりに仕事を引き継ぐ上司・同僚がいるけど、自由業になったらそんなの一切なし。業務知識の維持向上もさることながら体調維持も重要な課題になるなぁ。僕らの世代は一生働かなくてはならないのだからね・・・。

2019年本試験最終合格発表がありました

平成31年度(2019年度)司法書士試験の最終結果について(資料)

 最終合格の皆さま、本当におめでとうございます。「あの」試験の地獄の苦しみを知っている身としては本当に喜ばしく思います。合格者の平均年齢が40.08歳と業界的には由々しき事態ですが、僕のように長くかかった合格者の皆さまには特に「長い長い戦い、本当にお疲れさまでした!」と心から言いたいです。

 

 僕自身は20年の土地家屋調査士試験へ向けて本格的な勉強を始めました。権利の登記しか知らない自分としては表示登記の知識はとても新鮮で、不動産登記の仕組みを立体的に理解できそうな予感がします。また調査士試験の山場の1つである敷地権の理解はかつて区分建物の丸暗記した部分の理解の一助にもなりそうです。
 とはいえ、やはり難問は書式ですね。あと1年で本試験レベルまで上げられるのか非常に不安ですが頑張ってみます。今のところ司法書士試験記述で言えば不登・商登とも裏面白紙ってレベルです。
 この試験、択一は満点近くが要求されるし、書式も途中答案は絶対にダメです。民法・不登法のアドバンテージがあると舐めてたらまず受からないので本腰を入れてやっていきたいです。

 当面は法律の勉強については3本柱で進めていきます。

  1. 土地家屋調査士試験対策
  2. 司法書士試験11科目の知識の維持
  3. 司法書士開業へ向けての準備

 2.については「ケータイ司法書士」を通勤中に読むことにしました。
 基本論点のみ集約された「ケータイ」を開業までの最低知識維持ラインとします。将来「やっぱり合格して時間が経った奴は使えないなぁ」と言われないように。
 通勤の行きと帰りで計8講、約半年で全科目一周できます。全科目通勤鞄に入るため、気になった他科目のことがすぐ調べられるのが最大の利点です。民法改正については科目別受講したパーフェクトローラーテキストを併用します。「ケータイ」読んでると「あれなんだっけ?」と思う発展論点が必ず出てくるので、それを調べていたら結構思い出すことができます。

 3.については(上記1.2.をこなしてなお余力のある限り)「信託法」「破産法」を当面の課題として勉強しようと思っています。あと青年会の研修にも積極的に参加したいです。
 信託と言えば民事信託が司法書士業界で非常に流行っています。「後見」「遺言」にはない便利な点が強調されますが「便利」なだけで本当に良いのか、見えない法律上・課税上のリスクがあるのではないか、と漠然とした疑問を持っています。民事信託を真に使いこなすには実体法の深い理解が必要だと思ったのです。
 破産法は全く未知の分野です。破産手続や民事再生手続は今の仕事に直接関係があり、将来は裁判業務も力を入れてやって行きたい思いもあって、まずは基本の破産法を勉強してみようと思いました。そうそう、裁判業務を見据えるなら「要件事実論」も忘れないうちに復習しなくちゃね。
 実は一連の新人研修が終わると司法書士に登録していないと研修が全く受けられなくなります。そこで未登録でも加入できる青年会に参加しました。なので青年会の先輩に実務の話を伺いつつ、研修にも積極的に参加するつもりです。先日、須磨で開催された近畿ブロック青司協の研修会はとても勉強になりました。
 

 同期の多くは司法書士業界に身を置いて毎日「実務経験」を積んでいます。机上学習など実務経験の前には全く敵いません。知識を蓄えてから開業なんて言ってたらいつまでも開業できないから、まずはやってみることなのでしょう。
 とはいえ今のところは銀行員を続ける以上、やれる勉強を精一杯やるしかないなと思っています。

 将来、胸を張って開業できるようにね。